所得控除は、確定申告が必須の自営業の方やフリーランスの方以外に、確定申告に馴染みのない会社員の方たちにも関係のあるものになります。
今回の記事ではまず所得控除の一覧を見ていただいて、その次に1つずつ詳しく内容を見ていきます。
所得控除をしっかり申告していくことによって、節税に繋がっていきますのでどのような所得控除があって、自分が当てはまるものがないか確認してみてください。
この記事は申告書作成ステップ2になりますので、先にステップ1の記事を読んでいただいた方が理解しやすいかもしれません。
他にも確定申告に関する記事がいくつかありますので、お時間のあるかたは読んでみてください。












記入欄の説明
この記事で説明する内容の記入欄は以下のようになります。
申告書Aを使う方


①と②の欄に記入します。
①該当する控除を記入し、合計額を計算する。
年末調整を受けたサラリーマンなら合計額は源泉徴収票から転記すればOK!
②該当する控除があれば記入し、全体の合計額を計算する。
申告書Bを使う方


該当する控除を記入し、合計額を計算する。
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所得控除一覧










所得控除を一覧にまとめましたので、どんな控除があるのか、自分が当てはまる控除があるのかを確認してみてください。
所得控除14種類
総所得金額から差し引くことの出来るものを、「所得控除」といいます。
所得控除は14種類あります。
総所得金額から所得控除を差し引くと、課税総所得金額を算出できます。
総所得金額-所得控除額=課税総所得金額
雑損控除
本人や本人と生計が同じ家族(総所得金額等が48万円以下の配偶者や家族に限ります)が災害や盗難などにより住宅や家財に損害を受けたときに、一定の損失額控除できます。
雑損控除額の計算方法は2種類あり、どちらか多い方が雑損控除額となります。
①差し引き損失額(保険金などの補填を引いた実損)-所得金額の1/10
②差し引き損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
災害関連支出とは
- 壊れた住宅や家財の取り壊し、後片付けの費用
- 現状回復のための出費(損失部分は除く)
これらの支出に関する領収書などは申告のときに必要になるので、必ず保管しておきましょう。
医療費控除
・本人や本人と同じ家族のために払った医療費が10万円超か、もしくは所得金額の5%超のとき。
・スイッチOTC医薬品の購入金額が1万2,000円超あって、セルフメディケーション税制の適用を受けるとき、その超えた税額を控除できます。
高額な医療費に関しては、こちらの記事で詳しくまとめております。




寄付金控除
国や地方公共団体、社旗福祉法人、認定NPO法人に寄付をしたときや政治献金をしたときなど、本人が特定の寄付金を支出したときに、一定額を控除できます。
「ふるさと納税」も寄付金控除に当てはまります。
ふるさと納税のやり方はこちらの記事をお読みください。




政党や政治資金団体に政治活動への寄付をしたとき、あるいは認定NPO法人や特定の公益社団法人、国立大学法人などへの寄付をしたときは、「税額控除」といって、税額からダイレクトに税金分を差し引いてもらう方法もありますが、「確定申告ステップ4」の記事で出てきますので、ここでは寄付金控除のみの説明とさせていただきます。
寄付金控除
どちらか少ないほうを控除できます。
①特定寄付金の額-2,000円
②総所得金額などの40%-2,000円
社会保険料控除
詳細は以下のとおりです。






小規模企業共済等掛金控除
小規模企業の経営者向けの制度になります。
あなたが支払った小規模企業共済等の掛金について、その支払った金額を差し引くことが出来ます。
次の掛金が該当します。
- 小規模企業共済等の規定による共済契約(旧第2種共済契約を除きます)の掛金
- 確定拠出年金法の企業型年金加入者掛金または、個人型年金加入者掛金
- 心身障害者扶養共済制度にかかわる契約で一定のものの掛金
掛金の種類・拠出方法・控除の方法は以下のとおりです。
種類 | 拠出の方法 | 所得控除の方法 |
---|---|---|
企業型確定拠出年金 (DC) | ①会社拠出分 ②給与天引きまたは 個人支払い分 (マッチング拠出) | ①会社負担なので控除なし ②会社が金額を把握し、会社が計算 (転職時は、転職先の企業型DCかiDeCoに移管) |
個人型確定拠出年金 (iDeCo) | ①給与天引き分 ②個人支払い分 | ①会社が金額を把握し、会社が計算 ②年末調整か確定申告 |
小規模企業共済掛金 | ①個人支払い分 (会社社長) ②個人支払い分 (個人事業) | ①年末調整か確定申告 ②確定申告 |
申告書には証明書を貼る必要があります。
申告書に掛金の額の証明書を添付する必要があります(申告の際に提示することも認められています)。
なお、会社が年末調整で手続きを行ってくれる場合には、その必要はありません。
生命保険料控除
まず、種類と金額をチェックしましょう。
生命保険料は「一般生命保険料」、「個人年金保険料」、「介護医療保険料」の3種類があり、合計で最高12万円差し引けます。
年末になると、保険会社などから1年間に支払った額の通知が来るので、次の3点をチェックしましょう。
- 自分の支払った生命保険料が「一般生命」か「個人年金」か「介護医療」か
- 自分がいくら支払ったか
- 「旧制度」か「新制度」か
控除額の計算は、一般生命保険料、個人年金保険料、介護医療保険料ごとに、それぞれ旧保険料と新保険料で、次のように計算します。




一般生命保険料控除と個人年金保険料控除については、旧制度と新制度の両方の契約がある場合、控除ごとに以下のうちいずれかを選ぶこができます。
①旧契約のみ(最高5万円)
②新契約のみ(最高4万円)
③旧契約と新契約の両方の合計(最高4万円)
・生命保険料控除額(全体で最高12万円)
平成24年1月1日以後に締結や更新等とした契約
① | 一般生命保険料控除 | 最高4万円(旧契約のみ適用で最高5万円) |
② | 個人年金保険料控除 | 最高4万円(旧契約のみ適用で最高5万円) |
③ | 介護医療保険料控除 | 最高4万円 |
①~③を合計し、最高12万円を限度として、生命保険料控除額とします。
以下に計算例を書いておりますので、ご自身で計算してみてください。
計算例
Aさんは、令和3年に、旧契約の「一般生命保険料」を70,000円、旧契約の「個人年金保険料」を40,000円、新契約の「介護医療保険料」を30,000円支払いました。
- 「旧一般生命」分 70,000円×1/4+25,000円=42,5000円
- 「旧個人年金」分 40,000円×1/2+12,500円=32,500円
- 「新介護医療」分 30,000円×1/2+10,000円=25,000円
Aさんは、合計100,000円分を差し引くことができます。
控除のために生命保険に入ることは本末転倒になります。
無駄な保険に入らないためにはこちらの記事をどうぞ。




地震保険料控除
地震保険料控除を受けるには、次の3つの条件に当てはまる必要があります。
①居住用の家や生活用の動産を目的とする
②その所有者は、納税者や生計を1つにしている配偶者・親族である
③地震・噴火・津波などを原因とする火災・損壊などによる被害をてん補する保険金・共済金が支払われる
損害保険料控除と併せて利用する
損害保険料控除が廃止され、代わりに最高5万円の地震保険料控除が認められることになりました。
ただし、長期の損害保険契約の保険料を支払っていた方には、経過措置として、地震保険料と合わせて5万円の控除が認められます。
長期損害保険契約:保険期間や共済期間が10年以上で、満期返戻金などを支払う旨の特約があるもの
年末になると、保険会社などから1年間に支払った額の通知が届きます。
次の2点をチェックしましょう。
- 自分の支払った保険料が地震保険料なのか、長期の損害保険料なのか
※1つの契約が両方にあてはまっても、どちらか一方の控除のみを選択しなくてはなりません。 - 自分が支払った金額
地震保険料分の控除額+長期損害保険料分の控除額=地震保険料控除(最高5万円まで)
控除額を計算してみましょう


備考:損害保険料控除ができるのは長期のうち、平成18年12月31日までに契約し、平成19年以後に契約変更していないものです。
計算例を以下に書いておりますので、ご自身で計算してみてください。
計算例
Aさんは、令和3年に1つの契約で地震保険料4,728円と長期の損害保険料41,640円を支払いました。
地震保険料:4,728円は50,000円以下なので 4,728円
損害保険料:41,640円は20,000円超なので15,000円
1つの契約が両方にあてはまっても、どちらか一方の控除のみを選択するので、15,000円の控除となります。
寡婦・ひとり親控除
本人が寡婦であるときは、27万円、またひとり親に該当する方は35万円を控除できます。
年の12月31日(年の途中で亡くなった場合にはその亡くなった日)の状況で判断します。
ご自身がどれにあてはまるのかの「判定チャート」は以下になります。




勤労学生控除
本人が特定の学校の勤労学生である場合に27万円を控除できます。
ただし、その年の合計所得金額が75万円以下でかつ自己の勤労によらない所得が10万円以下の場合にのみ適用されます。
障害者控除
本人や配偶者、家族が、障害者や特別障害者であるとき、1人につき27万円を控除できます。
また特別障害者に該当する場合は40万円。
同居特別障害者は75万円を控除できます。
障害者控除 | 27万円 |
特別障害者 | 40万円 |
同居特別障害者 | 75万円 |
※家族は同一生計配偶者または扶養家族に限ります(それぞれ合計所得金額48万円以下であること)。
ご自身が障害を負ってしまった時には、障害年金という公的保障があります。




配偶者控除
本人の合計所得金額が1,000万円以下で、生計が同じ配偶者があり、配偶者の合計所得金額が48万円・32万円・16万円のいずれかが控除されます。
以下に表でまとめてあります。


自分自身の合計所得金額が1,000万円超(給与収入1195万円超)の方は控除を受けることはできません。
配偶者特別控除
本人と生計が同じ配偶者(配偶者控除の対象外の配偶者)があり、納税者本人の合計所得金額が1,000万円以下の場合に最高額38万円を控除できます。
控除額は本人と配偶者の合計所得金額に応じて変わります。
以下の表は、配偶者の合計所得金額と自身の所得別の控除額になります。
配偶者の合計所得金額 | 自身の所得 900万円以下 | 自身の所得 900万円超 950万円以下 | 自身の所得 950万円超 1,000万円以下 |
---|---|---|---|
48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
扶養控除
本人に扶養家族がある場合に控除されます。
本人と生計が同じで合計所得金額が48万円以下の方が扶養家族に該当します。
扶養控除を表でまとめたものが以下になります。


基礎控除
合計所得金額が2,400万円以下であれば、すべての納税者が48万円を控除できます。
2,400万円超の場合、段階的に32万円、16万円、0円となります。
冒頭の所得控除一覧表にも書いていますので、確認してみてください。
確定申告を簡単に「クラウド会計ソフト」
ここまでで確定申告ステップ2の解説はすべてとなります。
ここまでの内容を見て、「控除の種類が多すぎる」、「計算が苦手で自信がない」と言う方も少なからずおられると思います。
そういった方には1度「クラウド会計ソフト」を試していただきたいです。
無料お試し期間がある「クラウド会計ソフト」がありますので、気軽に使用感などを体験することが出来ます。
これからの時代、特に個人事業主の方、フリーランスの方、副業で稼いでいる会社員の方には必須となってくるものです。
こちらの記事でまとめておりますので、興味のある方はご覧ください。




まとめ
申告書作成ステップ2が終わりました。
今回の記事の内容は①所得控除を一覧表でおおまかに確認して、②控除別に1つずつ解説する。
というような流れでした。
自分に当てはまる所得控除の内容を見れば、「所得控除額」がわかります。
申告書作成ステップ1で「総所得金額」を算出することができますので、「総所得金額」-「所得控除額」=「課税総所得金額」となります。
つまり、税金がかかってくる所得金額を出すことができるわけです。
次の申告書作成ステップ3では、「課税総所得金額」に「税率」をかけて「所得税額」を計算していきます。
聞きなれない言葉もたくさん出てきますので、1度で理解できない場合は、複数回読んでみてください。